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平成18年、物納制度が大幅に見直しされました。税制改正大綱を読むと、物納制度改正の骨子は、以下のように緩和されるものと厳しくなるものと2つに分かれるようです。

○緩和と思われる(緩和といわれている)改正
物納劣後財産を明確化する 無道路地や市街化調整区域の土地など一定の条件の下「物納劣後財産」(他に物納できる財産が無い場合に限り物納を認める財産)として明確化する。
延納から物納へ変更可能となる 延納から物納に変更を認める。(但し申告期限から10年以内、収納価格は物納に変更申請したときの価格となる)

○厳しくなると思われる改正
書類の提出 物納申請期限(相続申告期限)までに、原則として登記簿、測量図境界確認書、確約書等一定の書類の提出を求める。
期間の短縮 物納申請後3ヶ月(6ヶ月)には物納の許可または却下の判断がなされる。申請者から書類等提出の期限延長は最長1年(ただし一回につき最長3ヶ月)。
利子税の負担 物納申請期限から収納までの利子税を課す。(ただし審査期間は含まない)
自ら取下げた場合の取扱い 物納申請後、売却等の理由で自ら取下げた場合には、申請から取り下げまで利子税ではなく延滞税が課せられる。

○改正を踏まえた所感と今後の対応策
私のこれまでの実務経験からすると、「物納劣後財産」については実務上、いままでと変わらない。(ただ明確化されるだけ、いままでも条件によって物納できた場合があった)
「延納から物納」についてはメリットもあるが、申請時の評価になるということでメリットが薄い。

申請書類の提出期限等が実質的に徴収サイドによって区切られる事を考えると、実は非常に厳しい改正だと言える。これまでは何年かかろうと国からの一方的な却下は事実上ありえなかったが、これからは期限までに整備ができないと却下されてしまう。特に提出書類は納税者本人以外に、隣地や借地人などの利害関係人の協力が得られなければ提出できないもが沢山ある。

今までは納税者の書類整備や国の事務処理が遅かったので、物納許可に時間がかかり、その間、国は実質、地価の下落リスクをとってきた。これからは物納に利子税をかけて期限を設けて、納税者を煽り収納スピードを早める、そして地価の下落リスクを回避し、早期の換金化を図るという狙いもあるのだろう。いずれにしても納税者(含め私のようなコンサルタント)に相当の不可がかかることになる。

いずれにしても、できれば
相続発生前から物納予定地の早めの選定、整備が必要となる。特に境界確定測量と、底地、借地面積の確定調整は利害関係人に左右されるのでより一層、早期の整備が求められる。
○物納制度新旧対照表
改正後 改正前
●物納審査期間の法定
・原則、申請期限から3ヶ月(〜9ヶ月)に物納許可または却下となる。この期間を過ぎても許可または却下されなかった場合は許可とみなす。
●物納審査期間
・物納審査期間は定められておらず、書類の提出、整備状況によって長いものでは10年以上かかる場合も。
●提出書類の明確化
・原則、申告期限までに測量図や謄本、境界確認書などの物納手続き関係書類を提出。
・提出期限に書類等が間に合わない場合、納税者からの延長申請が可能。ただし、物納申請期限の翌日から起算して、最長1年間(一回の延長申請につき最長3ヶ月)。
●提出書類
・物納申請後、整備出来次第順次提出。
・担当署、担当者によって異なる場合も。
●物納不適格財産の明確化
・物納不適格財産を明確化するとともに、他に適当な財産がない場合に限り、物納が認められる物納劣後財産が明確化された。
●物納不適格財産
・管理または処分するのに不適当な財産について定義はあるものの、現場の取扱が不明確。
●延納中の物納の選択
・延納申請したものは申告期限から10年以内に限り物納申請が可能となった。ただし収納価格は当該物納申請時の価格となる。
●延納申請したものは物納に変更できない
●物納関係書類の書類提出の延長申請をした場合など、法定審査期間(3ヶ月)以外の期間は収納まで利子税が課される。
●物納申請後、売却等の理由により、自ら取り下げた場合は申請の翌日から取り下げまで延滞税が課される。
●税務署からの財産変更要求はなくなり、却下のみとなった。却下された場合は一度に限り他の財産に変更できる。再申請が却下された場合は金銭納付のみとなる。
●物納が許可された場合、収納までに何年期間を要しても利子税の負担がない。
●管理処分不適当な財産は他の財産に変更を求められた。
 





■相続税物納の手引き(平成18年4月1日以降分 国税庁資料)

■相続税基本通達「新旧対照表」PDF(国税庁配布資料 平成18年6月26日)

■物納等不動産に関する事務取り扱いについて(平成18年6月29日財務省資料)

■財産評価基本通達の一部改正について(国税庁資料 平成18年10月27日)

■「相続税基本通達」


■「平成18年度税制改正大綱」物納関連は30頁です。(自由民主党)

■「国税不服審判所公表裁決事例」延納・物納関係

 
 
 
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